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静かな環境

「静かな環境」という言葉に、どのような環境をイメージされますか?

海の好きな人は、海辺の町をイメージされるかもしれません。 山深い森は、いかにも静かそうです。 童謡にもあるように「静かな湖畔」なんていかがでしょう。 この様な環境はイメージ通りの静かさなのか、測定事例を比較しながら見ていきたいと思います。

自然豊かな地域であっても、全く人の住んでいない場所を比較しても意味がありませんので、自然豊かな地域であること・人が生活できる環境であること・現在も人気のエリアであることを前提に3つの地域を選択しました。 また、これらの自然豊かな環境と比較する目的で、都心の高級住宅地「南麻布」での測定事例を加えてみました。

・葉山町(海辺の町)
・箱根強羅(山深い森)
・芦ノ湖畔(静かな湖畔)
・南麻布(都心の高級住宅地)

 

下図は各地域での24時間連続測定の結果です。
それぞれのレベルがどの地域か予想できますでしょうか?

・評価方法は等価騒音レベル(LAeq.30min)
・測定は1時間毎に正時より 30分間の実測を連続して24回繰り返しました。
・各地域ごとに開始時間が異なるので、比較を目的に開始時間を6時として再集計しました。
・突発音(緊急車両)は除きますが測定地域の特性を考慮し動物の鳴き声を含みます。

 

それでは、測定した地域と測定結果をご紹介していきたいと思います。

 

① 葉山(海辺の町)

葉山町は美しい海と山に囲まれた自然豊かな町であり、同時に関東屈指の高級住宅街でもあります。 賑やかな湘南海岸や鎌倉から少し離れているため、とても静かで住みやすい町としても知られています。

葉山でも海辺に面した立地で測定を行いました。 砂浜との間には車の通行できる道路はなく、建物のある敷地から直接砂浜に出られるため、道路騒音などの影響はほとんどありません。 また、周辺には気になるような音を発生する音源はなく、主な音の発生源は「海」でした。

道路騒音などの影響が少ない立地での測定でしたので、レベルの増減は海に関わる音のレベル変化になります。オフシーズンでしたが、海辺ではサーフィンや散歩を楽しむ人が見られましたので、会話音なども特徴的な音になるかと思います。 穏やかで波が静かな日でしたが、時間帯によって波が少し高くなる様子が見られました。とはいえ、全般的にはとても静かな海を感じられる気持ちの良い日だったと思います。

 

② 箱根強羅(山深い森)

山深い森に囲まれた高級リゾート地といえば、箱根強羅です。 かつては高級別荘地として栄えた場所で、今は高級旅館が立ち並ぶ温泉リゾート地として有名です。 箱根強羅は、周辺の観光地から少し離れた山の中に位置しています。 町中には交通量の多い道路や鉄道がなく、まるで山奥の隠れ家のような静けさに包まれた町です。

測定場所は、見晴らしの良い高台にある、駐車場として利用されていた広く平坦な場所でした。周囲の道路は車両の通行がほとんどないため、まるで森の中にいるような立地でした。

1日を通して騒音レベルの変化が少ない印象です。 20時台と21時台に一時的に騒音レベルが高くなっているのは、この時間に風が強くなり、草木が揺れる音が発生したためです。その他の音としては、日中は鳥の鳴き声が聞こえていましたが、極端に大きな音(カラスなど)は発生しませんでした。 見通しが良い高台であるため、遠方の音が聞こえてきますが、何の音か判断できないような静かに唸るような音でしたので、風の音であると考えられます。

 

③ 芦ノ湖畔(静かな湖畔)

富士山周辺の湖の中では、豊かな自然が残された地域であり、周辺には数多くの別荘地が点在しています。

芦ノ湖に近接した湖畔の別荘地で測定を行いました。  芦ノ湖を一望できる一等地なのですが、測定当日は濃い霧で見通しが悪く、とても寒かった記憶があります。  周囲からは都会では聞けない様々な鳥の声が聞こえてくるのですが、湖の方向からは全く音が聞こえてこないんですね。 夜などは少し怖く感じたのを覚えています。

夕方や夜間など、一時的に騒音レベルが高くなるのは、周辺道路を観光客の車両が通過したためです。 箱根はドライブ好きの人にとって聖地のような場所であり、時々スポーツカーが走り抜けるような音がします。 うるさいと感じる程ではありませんが、それ以外には鳥の鳴き声しか聞こえてこないような場所なので、時間帯によっては少し気になってしまうかもしれません。

 

④ 南麻布(都心の高級住宅地)

南麻布は、都心にある超高級住宅地であり、誰もが憧れる場所です。 渋谷・恵比寿・六本木・白金・西麻布などの人気エリアに囲まれ、40カ国以上の大使館が集中しています。 まさに日本の中心地と言えるでしょう。

南麻布の中でも広いお屋敷が集中する一角で測定を行いました。 見るからに立派な門扉の奥には、広大な庭園と立派な邸宅が広がっていました。 この邸宅は測定後に取り壊され、現在はハイグレードな低層マンションが建っていますが、そのマンションの規模からも、この邸宅がどれほど大きかったかがうかがえます。

日中は騒音レベルが上昇しますが、それでも 55dB を上回ることはなく、0 時以降の深夜は 40dB を下回ってしまいます。 環境基準等では夜間の室内騒音目標値が 40dB 以下の場合が多いのですが、外部騒音がこれを下回っているのは驚きです。 音の種類としては、遠方から伝搬する道路騒音等だと思われますが、近隣の生活に伴う音も感じられます。 しかし、この場合も大きな音が発生しないのは、地域的な理由なのでしょうか。 穏やかで静かな環境であることは間違いありませんが、自らも会話音や自動車音の発生に気を付けなくてはと思うほどの静けさでした。

 

結果

各地域の騒音環境について調査してきましたが、いかがでしょうか。
下図のレベル変動はイメージ通りでしたか?

 

各地域の測定結果を環境基準の時間区分に分けて集計した結果は下表の通りです。

 

就寝時間帯の騒音レベルが最も気になると思われますので、夜間の騒音レベルで評価しますと、レベルの高い順に、芦ノ湖畔、箱根強羅、葉山、西麻布という結果になりました。 なんと一番静かだったのは、南麻布でした。 他の地域と 10dB 近い差をつけて、ダントツの 1 位です。

 

 

まとめ

今回は、葉山・箱根強羅・芦ノ湖畔、そして南麻布での測定事例を比較してきました。 その結果、自然豊かな環境よりも東京のど真ん中にある住宅地の方が静かであることがわかりました。  これまで多くの測定を行ってきて、今回と同じような結果を何度も経験してきましたが、こうやって改めて比較してみるとやはり驚かされます。

多くの人は、「静かな環境」と聞いて、自然豊かな環境を思い浮かべるのではないでしょうか。 私もその一人です。 しかし、人にとって「静かな環境」とは、必ずしも「音のない環境」とは限らないのかもしれません。