雨天時に測定を行わないのはもちろんですが、測定が長時間に及ぶ場合、測定期間中に天候が悪化して雨が降る事があります。 近年多くみられるゲリラ雷雨のような強雨であれば、被害にあう前に測定を中止して機材を回収するのですが、小雨や霧雨程度の降雨量が1mm以下の場合は、そのまま測定を続行する事の方が多いです。 理由としては降雨があったとしても僅かな量であれば測定値に影響がない場合もあるからですが、僅かな量で終わるか否かは観測を続けて、結果を見なければ分からないからです。 その結果から測定データが有効か否かを判断しなければならないのですが、出来れば予め天気予報などで降雨がない事を十分確認した上で測定を実施するのが望ましいと思います。
環境省「騒音に係る環境基準の評価マニュアル」より、天候に対する測定の対応
騒音測定時の環境条件
降雨・降雪・積雪時は、常態の騒音が測定できない事から測定は中止する。
理由として降雨音や濡れた路面により騒音レベルの上昇が予測される反面、降雪による吸音等による低下も考えられる。 また社会経済活動が変化して、常態と異なる可能性が高い。
では、どの程度の降雨なら測定値に影響がないのでしょうか。
降雨時の測定事例
下図は降雨時と晴天時に実施した道路騒音の測定結果です。
どちらも土曜日から日曜日にかけての24時間を対象に測定を行っていますが、1回目は降雨の影響が懸念されたため、翌週の同じ時間に再測定を行いました。 測定日は1週間の違いがありますが、曜日や時間、その他測定方法などの条件は全く同じです。 降雨のあった1回目の測定結果を青色、晴天に恵まれた2回目の測定結果をピンク色で表記し、同時に1回目の雨天時の降雨量を付記しています。
雨天時の雨量は最大でも1mmですが、降雨が始まってから3時間経過後のレベルに違いが見られ、その後は3~5dB程度のレベル差を保ちながら推移しています。 現地の状況としては路面に水たまりが発生したのが7時頃からで、水しぶき音がはっきりと感じられたのが8時頃からでした。 因みに図中の降雨量は気象庁発表のデータであり、現地で観測したものではありませんが、私たちが降雨量を確認する場合は気象庁発表のデータを参考とすると思われますので、気象庁発表のデータが1mm以下であっても、局地的には多少の増減があるかもしれません。
下図は雨天時と晴天時の周波数分析結果を比較したグラフです。
周波数特性の違いを見ると、水しぶき音からイメージできる通り、やはり1kHz以上の高い周波数で大きなレベル差が生じていることが分かります。 この事から降雨による騒音影響は水しぶき音が支配的であると判断する事が出来ますが、水しぶきの原因となる水たまりの状態は、降雨量や降雨時間、道路の舗装条件等の影響により大きく異なります。 つまり、水しぶき音の影響はその道路固有のものであり、雨量によっても変化する事から、事前の予測や事後の補正による影響の軽減は困難であると考えられます。
ただし、水しぶき音が主なレベルの違いである事を考えると、どんなに水たまりが出来たとしても、住宅街のようにそもそも交通量が少ない環境では、水しぶき音の発生は無視できるほど小さいかもしれませんので、測定する地域によっては多少の降雨であっても、測定値に大きな影響がない事が予想されます。 もちろん測定期間中に雨が予想される場合は測定を中止するべきですが、急な天候の変化など予期できない状況下での降雨の影響については、測定目的や測定場所、雨量・降雨時間、路面の状況、レベルの時間変動など総合的な観点から、そのデータを活用すべきかどうか判断する事が望ましいと考えます。
結論
一例ではありますが1mm以下の降雨であっても長時間続けば5dB程度レベルが上昇する可能性がある事が分かりました。 測定を行う際には、僅かな降雨量であっても長時間続く場合は測定を中止すべきですし、可能であれば天候が安定している時期に測定を行う事が望ましいですね。