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環境確保条例の適用区域(特例が適用される地域)

前回は環境確保条例における騒音規制基準の区域の調べ方についてお話しました。 今回は、その中でも特に騒音にお困りの方にとって重要な特別地域について詳しく解説していきます。

特別地域では、通常の区域に比べて5デシベル低い騒音レベルが規制基準となります。 これは、あたかも1区分上の地域の基準が適用されることを意味し、より静かな環境が保たれるよう配慮された地域です。

少々専門的な内容になりますが、できるだけわかりやすく説明していきますので、最後まで読んでいただけると幸いです。

 

1.日常生活等に適用する騒音の規制基準における特別地域

第2種区域・第3種区域・第4種区域の区域内であって、下記の施設の周囲おおむね 50m 以内の区域では、通常の区域よりも5デシベル低い騒音レベルが規制基準となります。

 

学校 小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、大学、高等専門学校、盲学校、聾学校、養護学校及び幼稚園 (文部科学省Webサイトより)
保育所 認可保育所(厚生労働省)、認証保育所(東京都)
病院 一般病院、特定機能病院、地域医療支援病院、その他(厚生労働省Webサイトより)
診療所 一般診療所(個人・医療法人)、歯科診療所
図書館 国立図書館、公共図書館(東京都)など
老人ホーム 特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、その他
認定こども園 東京都の認定・認可を受けた子育て支援事業を行う施設(東京都福祉局Webサイトより)

※上記の施設が、お住まいの地域の騒音規制の対象となるかどうかについては、最寄りの市区町村の環境課などにご確認ください。

 

例えば、ご自宅が第2種区域内であった場合で、尚且つ、小学校の敷地の周囲から 50m の範囲内であった場合は、第1種区域と同じ規制基準値が適用されます。

実際に、東京都内では、特に校や病院といった教育・医療施設が多く集まる駅周辺や住宅街など、利便性の高い地域に上記のような施設が多く見られます。 利便性の高い地域は、一般的に騒音が大きくなりがちですが、上記のような施設周辺では、より厳しい騒音規制が適用されます。

このような特別地域の存在は、騒音測定を行う際に見落としがちです。そのため、測定業者だけでなく、騒音測定を依頼する方も注意した方が良いと感じます。

弊社のお客様の中には、区に測定を依頼したが基準値以下で問題なしと判断されたお宅がありました。 弊社にご相談いただいた際にご自宅に伺ったところ、目の前が高校のグラウンドでしたので、確認のため区の資料を拝見したところ、5デシベル減じていない地域として評価されていました。 もしかしたらグラウンド側なのでそうなったのかなと思い区に確認したところ、確かに学校の敷地の周囲50mの区域内であるという事で、5デシベル減じた基準値が適用される事となった事例がありました。 その結果、当初は問題なしと判断され、解決済みとして処理されていた事案でしたが、規制基準を上回るという事で、何らかの対応に動いて頂ける事となりました。

このように、区の担当者の方でも、特別地域の指定に関する詳細な規定を把握しきれていないケースがあり、住民の方自身で情報を収集し、確認することが重要です。

 

2.環境確保条例の工場・指定作業場に係る騒音の規制基準における特別地域

東京都では、環境確保条例によって、生活環境の保全を目的とした騒音規制が実施されています。 更に特定工場等と呼ばれる、大規模な騒音源となる工場や事業場に対して、より厳格な規制が定められています。

特定工場等とは、騒音規制法において、著しい騒音を発生する特定施設を設置する工場や事業場を指します。 特定地域内に特定施設を設置・変更する場合には、その所在地の区市町村に事前に届出を行うことが義務付けられています。 さらに、特定地域内に特定工場を設置している者は、法で定められた騒音規制基準を遵守しなければなりません。

東京都の環境確保条例は、都内全域の騒音を規制対象としています。そのため、東京都内に特定施設を設置する工場・事業場は、例外なく規制の対象となります。 特定工場等に対する規制基準には、地域によって異なる特例が設けられています。この特例が適用される地域を、環境確保条例では「特別地域」と呼んでいます。

特別地域については環境確保条例の工場・指定作業場に係る騒音の規制基準で詳しく説明されています。

 

※環境確保条例の工場・指定作業場に係る騒音の規制基準より抜粋

 

要約すると、2区分以上異なる区域が接している場合、その境界から30m以内の地域では、基準値から5デシベル減じる事が出来ます。 例えば、第1種区域と第3種区域が隣接している場合、第3種区域のうち第1種区域から30m以内の部分は『第1特別地域』という扱いとなり、第2種区域の規制基準値が適用されます。

下の地図を参考に考えると、緑色の地域が第1種区域、黄色・黄緑色の地域が第2種区域、ピンク色の地域が第3種区域ですが、第1種区域(緑色)と第3種区域(ピンク色)が隣接している場合、両者の基準値には10デシベルの差が生じることになります。 そこで、第3種区域のうち、第1種区域から30メートル以内の範囲(図中の赤点線部分)を『第1特別地域』として定め、この範囲内では、第2種区域と同等のより厳しい騒音規制を適用します。 つまり、第3種区域の基準値から5デシベル減じた値が適用されることになります。

 

 

ただし、特別地域という考え方は、環境確保条例の工場・指定作業場に係る騒音の規制基準に対して適用されるものであり、日常生活等に適用する騒音の規制基準に対しては適用されません。 つまり、騒音の原因が特定工場等であるかどうかによって、適用される規制が異なるということです。 特定工場等に該当するかどうかは、地域の区役所などで確認する必要がありますが、騒音の原因が工場や事業場である場合は、一度確認することをおすすめします。

 

まとめ

今回は環境確保条例における『特別地域』についてご説明しました。 法律に関するお話は、専門用語が多く、初めての方には少し難しいかもしれませんが、『騒音の規制基準には特別地域がある』という事だけ覚えて頂ければ幸いです。

次回のテーマは、環境確保条例における騒音測定の具体的な方法です。 測定高さの1.2mという基準や、反射音の補正が必要な理由、そしてその補正量をどのように決めるのかなど、環境省や総務省が公開している資料に基づいて、詳しく解説していきたいと思います。

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