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環境確保条例における測定方法 第2回(最大値と時間率の90%レンジ上端値の比較)

前回は環境確保条例(騒音規制法)の測定方法についてお話しましたが、今回は90%レンジの上端値の求め方についてご説明していきたいと思います。

 

90%レンジの上端値について

環境確保条例(騒音規制法)では、90%レンジの上端値に2種類の測定方法があります。

1.90%レンジの時間率騒音レベルの上端値(LA.5 )
2.最大値の90%レンジの上端値( LA.Fmax.5 )

 

測定方法によるレベルの違いをご説明する前に、下のグラフをご覧ください。 このグラフは、10分間の騒音レベルを、様々な測定方法で測定した結果ですが、今回は90%レンジの上端値に着目して、時間率(LA.5)と最大値(LA.Fmax.5)の違いを可視化しています。

 

 

時間率(LA.5)と最大値(LA.Fmax.5)それぞれの90%レンジの上端値の測定結果

測定方法 測定結果
90%レンジの時間率騒音レベルの上端値 65dB
最大値の90%レンジの上端値 97dB

 

測定方法の違いによるレベル差の大きさに驚かれるのではないでしょうか。 どうしてこれほどまでに違った結果になってしまうのでしょうか。 まず、それぞれの測定方法について、上図を参考に具体的にご説明します。

 

90%レンジの時間率騒音レベルの上端値(LA.5)

JIS Z 8731(2019)では、時間率騒音レベルについて以下の様に説明しています。

対象とする時間Tのℕパーセントの時間にわたって、あるレベルを超えている場合の騒音レベル

少し分かり難いので上の図で説明すると、『対象とする時間T』とは、上の図では10分間の事で、『Nパーセントの時間にわたって』とは、90%レンジの上端値であれば 5パーセント、つまり10分間を対処とした5パーセントなので30秒間になります。 図中では青線( 65dB)を超えている時間の合計が30秒間という事になります。

つまり時間率騒音レベルは、衝撃騒音が発生している時間は含まれますが、衝撃騒音のレベルの大きさについては評価されない測定方法であると言えます。

 

最大値の90%レンジの上端値(LA.Fmax.5)

騒音規制法(条例等)では、衝撃騒音に対してこの測定方法を用いる事になっているので、衝撃騒音のみが対象となります。

一般的には50回法が多く採用されていますので、観測数が50個になるまで衝撃騒音の最大値を測定します。 上図の場合は10分間中の衝撃騒音は20回だったので、50回になるまで測定を続けなければなりません。

測定した50個の最大値から累積度数曲線を求め、その結果から90%レンジの上端値を読み取ります。

この測定方法から分かる通り、最大値の90%レンジは、衝撃騒音以外の音を無視した測定方法であると言えます。

 

測定者によって測定結果にばらつきが生じる原因

今回の事例は極端な例ではありますが、衝撃騒音のレベルが低下したり、変動騒音が顕著になると、どちらの測定方法がより適切かの判断が難しくなっていきます。 また、騒音は時間的な変動が大きいことから、現場に短時間の滞在では、その特性を十分に把握することが難しく、測定者間の判断に差が生じることが考えられます。 これが、測定結果のばらつきの一因となっていると考えられます。

ばらつきを防ぐ方法としては、以下の方法などが考えられます。

1.苦情申立者に対して十分なヒアリングを行う。
2.事前に現地下見を行い、測定方法や測定時間について検討する。
3.可能な限り長い時間範囲で複数回測定を行い、安定した測定結果の確保に努める。
4.同時に複数の測定方法を実施し、レベルの誤差の理由を検討する。

特に(4)のように、複数の測定方法を同時に実施してレベルの誤差を比較することは、騒音問題の本質を深く理解する上で非常に有効です。 しかし、このような詳細な調査には、多くの時間と費用がかかるため、すべてのケースで実施できるわけではありません。そのため、事前にお客様と十分な協議を行い、調査の範囲や費用対効果を検討することが重要です。

 

まとめ

環境確保条例に伴う騒音測定では、90%レンジの時間率騒音レベルの上端値(LA.5)が、もっとも多く用いられている測定方法だと思います。 理由は、日常生活で発生する騒音の殆どが、様々な要因で発生する『不規則かつ大幅に変動する騒音』であるためです。 しかしながら、お客様の声を伺っていると、特定の衝撃騒音や間欠騒音が苦情の対象である場合が多いように感じます。 もし、測定業者の出した測定結果が、実際の感覚と大きく異なるようであれば、測定方法が間違っている可能性を考えた方が良いかもしれません。