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環境確保条例における測定方法 第1回(測定方法の種類)

東京都の環境確保条例(都民の健康と安全を確保する環境に関する条例)では、『日常生活等に適用する騒音の規制基準』を定めています。

内容について間違いがあってはいけないので、詳細は下記のリンク先で直接ご確認ください。

東京都の環境確保条例(東京都のHPへのリンク)

この記事では環境確保条例における測定方法に着目して考えていきます。

 

測定方法

・計量法第71条の条件に合格した騒音計
(周波数補正回路:A特性、動特性:速い特性(FAST))

・日本産業規格 Z8731 に定める騒音レベル測定方法

・騒音の大きさの値は次の通り

騒音計の指示値が変動せず、又は変動が少ない場合は、その指示値とする。
騒音計の指示値が周期的又は間欠的に変動し、その指示値の最大値がおおむね一定の場合は、その変動ごとの指示値の最大値の平均値とする。
騒音計の指示値が不規則かつ大幅に変動する場合は、指示値の90%レンジの上端の数値とする。
騒音計の指示値が周期的又は間欠的に変動し、その指示値の最大値が一定でない場合は、その変動ごとの指示値の最大値の90%レンジの上端の数値とする。

 

この表から分かる通り、測定方法は測定対象によって決まるのではなく、その時の騒音レベルの変動特性を見て判断しなければなりません。

『都民の健康と安全を確保する環境に関する条例 平成12年12月22日 条例第215号』では、この測定方法について別表第13に「騒音の測定方法は、工場及び指定作業場の騒音に係る測定方法の例による。」と明記されています。

工場や指定作業場における騒音測定では、特定の機械や設備からの音が主な発生源となるため、その音響特性は比較的安定しており、測定方法を比較的容易に選定できます。 しかしながら、生活騒音の場合は音源の種類が豊富で、同じ音源であっても発生パターンが多様であることから、その都度の変動特性に合わせた測定方法を検討する必要があります。

 

変動特性の応じた測定方法の目安

工場及び指定作業場における測定方法については、総務省で公開している資料「騒音に係る苦情とその解決方法」にて、以下の図を用いて簡潔に説明してあります。
(東京都の条例と比較する際は(b)と(c)の順番が逆になります)

 

 

この図を実際のレベル変動を比較する事で、測定方法の判断理由を明確にすることができそうです。 測定方法が決まれば、それぞれに応じた測定を行います。

 

90%レンジの上端値の求め方について

測定方法において特に注意する点として、90%レンジの上端値の求め方の違いがあります。 騒音規制法(条例等)の測定方法では、以下の2種類の90%レンジの上端値の求め方が採用されています。 同じ90%レンジの上端値ですが、求め方が異なる事に注意が必要です。

・不規則かつ大幅に変動する騒音の場合

騒音計又は分析ソフトウェアの積分平均機能を利用し一定時間の90%レンジの時間率騒音レベルの上端値(LA.5)を求める。

・発生ごとに最大値が変化する衝撃騒音

発生ごとの衝撃音(FAST)最大値から累積度数曲線を求め90%レンジの上端値(LA.Fmax.5)を求める。

このように同じ90%レンジの上端値であっても、時間率なのか最大値なのかで測定方法が異なる点に注意が必要です。

 

変動特性の判断が難しい場合

とはいいましても、生活騒音は、工場騒音と異なり、音源の多様性と時間的な非定常性が顕著です。

例えば、日中は様々な音が同時発生することにより『不規則かつ大幅に変動する騒音』と判断された場合でも、夜間は一部の衝撃的な音だけが残った場合は『発生ごとに最大値が変化する衝撃騒音』と判断することになります。 この様に時間帯により騒音の発生パターンが変化する場合は、それぞれの時間区分ごとに測定方法を変えなければなりません。 このような時間帯による騒音の変動特性の違いを考慮し、適切な測定方法を選択することが重要です。

騒音規制法において、様々な測定方法が規定されているのは、このような騒音の複雑な特性を的確に把握し、過小評価を避けるためです。 であるなら、複数の測定方法を試行し、最も高いレベルを示した測定方法を採用することで、その騒音の特性を最もよく表すことができると考えられます。 これは、騒音の変動特性が時間帯によって変化する場合、一つの測定方法だけでは、騒音の影響を正確に評価できない可能性があるためです。

 

まとめ

環境確保条例の測定方法で注意が必要なのは、測定方法の判断が測定者の経験と知識に委ねられるということです。  これについては総務省で公開している資料「騒音に係る苦情とその解決方法」でも、以下のような懸念事項の記載がありました。

音源別の評価量の採用は、騒音影響を的確に把握できるというメリットがある反面、基準値を比較して騒音対策の優先順位を決めるといったような騒音政策が進めづらくなります。また、変動特性に応じて 4 種類の代表値を測定者自身が決める必要があり、測定者の判断によっては測定結果にばらつきを生じる可能性もあります。

騒音規制法の基準値が時間帯や変動特性によって細かく設定されていることは、多様な騒音環境に対応するための合理的な措置ではありますが、一方で、測定者には、それぞれのケースに最適な測定方法を選択し、正確な評価を行うことが求められます。 しかしながら、測定者も技術サービス業という側面を持つため、コスト面での効率化も避けられない課題です。 これらの判断が測定者に委ねられてるという事で、責任の重大さを痛感しております。 今後も、お客様のご要望に真摯に向き合う事で、騒音問題の解決に貢献してまいりたいと考えております。