今回は 50回法における 90% レンジ上端値の求め方をご紹介します。
近年では騒音計の演算機能により、90%レンジ時間率騒音レベルは簡単に求めることが可能になりました。 しかし、最大値の90%レンジ上端値については、現在でも累積度数分布図を用いて求める必要があります。
騒音測定業務に携わる人にとっては定型の書式があるものの、初めて90%レンジを求めようとする方には分かりづらいと感じることがあります。
そこで、初めての方でも簡単に扱える分析用紙を作ってみました。 dBの集計と累積度数の計算が簡単にできるように、マークシート方式を採用しています。
90%レンジ上端値は、騒音の評価にとって重要な指標の一つです。 ぜひこの分析用紙を使って、90%レンジの算出に挑戦してみてください。
分析用紙と記入例は以下よりダウンロードできます。
分析用紙の記入方法
90%レンジ分析用紙(記入例)では、前回の記録用紙(記入例)のデータを用いています。
こちらと見比べながら読み進めていただくと分かりやすいと思います。
左側の表の記入方法をご説明します。
dB (整数) | 1 段目のセルに最小値を記入します。 1dB 加算しながら最大値になるまで記入します。 |
マークシート | 記録用紙の測定結果から、左の dB の個数を記入する。(整数) |
度数 | マークシートの数を数える。 |
累積度数 | 度数の累計を求める。(最大値の累計は 50 になるはずです) |
表の作成が完了すると、マークシートを塗りつぶした様がヒストグラムとなります。
ヒストグラムはデータの分布を視覚的に見る事が出来ます。 単に最頻値やばらつきを把握するだけでなく、測定結果の正しさまで確認することができます。
測定が正しく行われ、データが平均値を中心に集まっている場合、ヒストグラムは美しく整った山型を描きます。 これは、データの信頼性が高く、測定結果が正確であることを示唆しています。
しかし、山が複数に分かれていたり、頻度にばらつきが見られる場合は、測定に誤りがある可能性があります。 突発音や異音などの影響、入力ミスなどがないか、確認してみるのがよいかもしれません。
累積度数分布図の作成
まず最初にグラフの下部のボックスに、グラフの中心が中央値付近になるように 5dB 間隔でレベルを記入します。
表から dB 値と累積度数を読み取り、横軸と縦軸の交点に点を記入します。 この時、点はメモリ線上ではなく、メモリの中央に記入します。
全ての点を記入できたら、滑らかな曲線で結びます。 ポイントとして、ヒストグラムがきれいな山型ではない場合は、点が飛び跳ねる事がありますが、その場合は飛び跳ねた点は無視してもかまいません。
この累積度数曲線と赤線の交わった範囲、記入例では黄色で塗りつぶされた範囲が、90%レンジの上端値・中央値・下端値となります。
グラフ下の記入欄に、それぞれの dB を記入します。
以上で 90% レンジ上端値の説明は終了です。
記録用紙にも 90%レンジ上端値の記入欄がありますので、同じように記入してください。 これで今回の測定結果資料の作成は完了となります。
補足
今回の記入例ではデータの範囲が 17 なので、点の数は 17 になりましたが、定常騒音などデータの範囲が極端に小さくなる場合(レベル範囲が 5dB 以内)は、データ数不足で累積度数分布図を描く事が出来ませんので、 90% レンジ上端値は求める事が出来ません。
その場合は、90%レンジ上端値が『測定不可』となってしまいますが、これも正しい測定結果なので、この場合はデータの算術平均値を測定結果とします。
いかがでしたでしょうか。
今回は初めての方でも簡単に 90%レンジ上端値を求める方法をご説明しました。 表計算ソフトを使えば簡単に求める事が出来ますが、第三者に見せる資料を作成するには、ある程度知識が必要となりますので、こちらの記録用紙をご利用した方が簡単になるかと思います。
是非ご活用いただいて、騒音対策のお役に立て下さい。