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高架高速道路に近接した建物

今回は高架高速道路に近接して高い建物がある場合の測定事例です。

高架道路下には交通量の少ない道路があり、実際に高架道路下にいると上からの音しか感じられません。  高架道路よりも高い位置では高架高速道路の道路騒音が支配的だと感じられます。  そのほかの音はほとんど感じられない事から、今回の測定地域は高架高速道路に起因する道路騒音が支配的な騒音環境であると考えられます。

測定は高架道路に近接している高い建物を利用して行いました。

測定ポイントの設定は、高架道路に面した外壁面のうち、高架道路下の道路面 +4m に P1地点、高架道路の道路面付近(高架道路側壁の外側)に P2地点、高架道路を見渡せる位置に P3地点を設定しました。   また P3地点と同じ高さで建物の裏面(高架道路に対して反対面)に P4地点を設定し、建物による遮蔽の影響を調べました。

 

 

測定は 24時間の連続測定を行い、毎時 30分間の等価騒音レベル(LAeq)を記録しました。
下図は各測定点の 24時間の時間変動(LAeq)を比較したグラフになります。

 

P1地点(青)のグラフが見えなくなっているのは、P2地点のグラフに重なっているためです。

4点のレベル変動を見ると、どの時間帯においても一定のレベルを保ちながら推移している事から、各測定点における騒音源が同一である事が明らかであると考えられます。

レベルの違いに着目すると、最もレベルが高い P3地点を基準とした場合、 P1・P2地点は -9dB 、P4地点は -16dB となっています。  高架道路よりも高い位置での高レベルは予想していましたが、同じ高さであっても建物に遮蔽されることによって 16dB もレベルが下がる事は予想していませんでした。 この場合でも 24時間のレベル変動では他の 3点と同じようなレベルで推移している事を考えると、大きくレベルが下がったとしても高架高速道路の影響は受けており、夜間(特に深夜)においても大きくレベルは下がる事は無い事が分かります。

 

 

今回の測定目的は高架高速道路に対する遮音対策でしたので、遮音検討に必要な音の周波数特性を比較してみました。

 

 

高架高速道路に面した 3点に着目すると、 P1地点と P2地点の周波数特性は殆ど同じですが、 P3地点では 500Hz 以上の周波数帯域でレベルが大きく異なる事が分かります。 これに対して 125Hz 以下のレベルは 3点とも同程度になっています。 等価騒音レベルだけを見ると 9dB のレベル差がありましたが、これは主に 500Hz 以上の周波数帯域のレベル差である事が分かります。  これらの事から、今回の建物において遮音対策を行う場合は、適した遮音等級の建築部材を選択するのはもちろんですが、特に 500Hz 以上の周波数帯域に対して有効な遮音部材(防音合わせガラスなど)を選ぶと効果的な遮音対策になると考えられます。

 

まとめ

今回の測定では高架道路の上下レベル差が 9dB でしたが、これは高架下の道路では感じる事はできません。 高架道路の路面と同等高さであっても、側壁に遮蔽された高さでは意味はなく、高架道路を十分見通せる高さでの測定が必要になります。  高架道路に直接面していない外壁面では 16dB 以上の音の減衰を期待できますが、この場合であっても高架高速道路の影響は大きく、深夜においても日中と同程度のレベルになる事が確認できました。  これらは当該建物の場合だけではなく、周辺地域にも同じ影響があると考えられます。  高架道路が音源の場合の騒音環境は複雑になりがちですが、適正な測定ポイントを設定する事によって誤差の少ない遮音対策を行う事が出来ると思いますので、測定実施の前には十分な現地調査と打ち合わせが有効であると思います。